お腹まわりの脂肪について
「体重はそこまで変わっていないのに、お腹だけ出てきた気がする」
「なぜかお腹まわりにだけ脂肪がついて、落ちにくい」
そんな感覚を、夏が近づくこの時期に強く感じている方も多いのではないでしょうか。
薄着になる季節だからこそ、身体のラインが気になり始めると同時に、「どうしてお腹だけ…?」という疑問も浮かびやすくなります。
脂肪は、全身に均等につくわけではなく、人によってつきやすい部位に個人差があります。
二の腕や太ももに脂肪がつきやすい人もいれば、体重の変化以上にお腹が出てくる人も少なくありません。
中でもお腹まわりは脂肪が集まりやすい特別な場所で、ここにたまる脂肪は、実は大きく2種類に分かれています。
ひとつは、内臓脂肪。腸や肝臓のまわりに蓄積し、見た目には分かりにくいものの、健康リスクに直結しやすい脂肪です。
「つきやすく、落としやすい」と言われることもありますが、実際には代謝やホルモン、腸内環境の乱れがあると、落としにくくなります。
もうひとつは、皮下脂肪。皮膚のすぐ下にある脂肪で、見た目や触感で実感しやすいもの。
比較的ゆっくりと増えていき、一度つくと落とすのに時間がかかるのが特徴です。
この2つの脂肪は、見た目も性質も違えば、原因も対策も異なります。
なぜこの部位に脂肪が集まりやすいのでしょうか?
そこには、
遺伝的な体質の傾向
ストレスやホルモンの変化
腸内環境の乱れ
食習慣や睡眠リズムの影響
といった、複数の要因が絡んでいます。
今回は、お腹の脂肪を「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けてそれぞれ詳しく解説し、その違い・原因・対策を明らかにしながら、健康的に整えていくヒントをお伝えします。
内臓脂肪とは?
内臓脂肪とは、腸・肝臓・胃などの臓器のまわりにつく脂肪のことを指します。
腹部の奥にあるため外からは見えにくいのですが、「内側からお腹が出る」ようなぽっこりお腹の原因になるのがこのタイプの脂肪です。
皮下脂肪とは異なり、内臓脂肪は比較的短期間で増減しやすい性質があります。
しかしそれは逆に言えば、食事・運動・ストレスの影響を受けやすいということでもあります。
なぜ内臓脂肪がつくのか?
以下のような要因が複雑に重なって、内臓脂肪が蓄積しやすくなります:
糖質や脂質の過剰摂取
特に血糖値を急上昇させる精製された糖質(白米・パン・砂糖など)は、インスリンの分泌を過剰に促し、脂肪の蓄積を促進します。運動不足・筋肉量の低下
筋肉が少ないと基礎代謝が落ち、脂肪の燃焼効率も低下します。ストレスによるホルモンの影響
ストレスホルモン「コルチゾール」は、内臓まわりに脂肪を溜め込むように働くことが知られています。腸内環境の乱れ
腸内細菌のバランスが悪化すると、糖や脂質の代謝に影響を及ぼし、脂肪がたまりやすい状態になります。睡眠不足
慢性的な睡眠不足は、食欲をコントロールするホルモン(グレリンとレプチン)のバランスを崩し、内臓脂肪を増やしやすくします。
内臓脂肪が引き起こすリスク
内臓脂肪は、見た目の問題だけではなく、体の中の健康リスクにも関わっています。
特に次のような不調や病気につながりやすいことがわかっています:
血糖値が上がりやすくなる
血圧や中性脂肪が高くなる
肝臓に脂肪がたまりやすくなる
心臓や血管に負担がかかる
これらが積み重なると、「メタボリックシンドローム」と呼ばれる状態になりやすく、将来的な生活習慣病のリスクが高まると言われています。
皮下脂肪とは?
皮下脂肪とは、皮膚のすぐ下につく脂肪のことを指します。
お腹まわりだけでなく、太ももやお尻、二の腕などにもつきやすく、「つまめる脂肪」として実感しやすいタイプです。
見た目にはっきり現れやすい一方で、体の内側の臓器に直接悪影響を与えることは少ないとされます。
とはいえ、代謝が落ちてくると徐々に増え、落としにくくなるのがこの脂肪の特徴です。
なぜ皮下脂肪がつくのか?
皮下脂肪は以下のような要因で蓄積しやすくなります:
エネルギーの摂りすぎと使わなさ
運動量に対して摂取カロリーが多いと、使いきれなかった分が脂肪として蓄えられます。冷え・低体温
体が冷えていると熱を逃がさないように脂肪を蓄積しやすくなる傾向があります。ホルモンの変化
特に女性はエストロゲンの影響で皮下脂肪がつきやすく、年齢を重ねるにつれてその傾向がさらに強まります。長期的な運動不足や代謝の低下
若い頃より運動量が減って基礎代謝が落ちると、脂肪の燃焼効率が下がり、少しの余剰でも脂肪として残りやすくなります。
皮下脂肪が気になる理由
皮下脂肪は、内臓脂肪のように急に増えることは少ない反面、ゆっくりじわじわと増えていき、気づいたときには定着しているという厄介さがあります。
また、体の冷えや血流の悪さと関係が深く、むくみ、セルライト、慢性的なこりやだるさの原因になることもあります。
見た目の変化だけでなく、疲れやすさや体の重さにつながる脂肪として向き合いたいタイプです。
内臓脂肪と皮下脂肪、それぞれの対策
お腹まわりの脂肪を落とすためには、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の性質に合わせたアプローチが大切です。
どちらも生活習慣の見直しが基本ですが、対策の重点が少しずつ異なります。
内臓脂肪への対策
内臓脂肪は、食後の血糖値上昇やストレスホルモンの過剰分泌などが引き金となって蓄積しやすくなります。
日々の食事と習慣を通じて、以下のポイントを意識してみましょう。
血糖値を急上昇させない食べ方
→ 野菜や海藻などの食物繊維を先に食べる、主食は控えめに軽めでも続けられる有酸素運動
→ ウォーキングやゆっくりしたジョギングを20〜30分/週3〜4回睡眠の質を高める
→ 就寝前のスマホ使用を控え、夕食は寝る2〜3時間前までにストレスのケア
→ 深呼吸、趣味の時間、入浴など、心がほっとできる時間を意識的につくる
皮下脂肪への対策
皮下脂肪はゆっくりと蓄積され、定着しやすいタイプ。体の冷えや代謝の低下、腸のはたらきの低下とも関係が深いため、日常の小さな積み重ねが鍵になります。
姿勢を整える
→ 猫背や反り腰は腹筋が使えず、脂肪がたまりやすくなる骨盤の歪みを整える
→ 骨盤が前傾・後傾・左右非対称になると、内臓の位置や血流に影響し、代謝が滞りやすくなる。特に下腹部やお尻に脂肪がつきやすくなる傾向あり胸式呼吸で肋骨と体幹を意識
→ 肋骨周辺の筋肉(肋間筋)や体幹が刺激され、代謝や血流が高まる腸内環境の改善
→ 発酵食品(ぬか漬け、味噌、ヨーグルトなど)を積極的に食物繊維と水分のバランス摂取
→ 野菜・きのこ類・海藻+1日1.5~2Lの水を意識的にとるよく噛む・咀嚼の習慣
→ 満腹中枢が働きやすくなり、消化・吸収・代謝がスムーズに
まとめ|脂肪を知り、身体を整える “食と動き” の視点
お腹まわりの脂肪には、見た目だけでは分からない種類と原因の違いがあります。
内臓脂肪と皮下脂肪、それぞれの特徴を理解したうえで、体の内と外から働きかけることが、健やかな身体づくりの第一歩です。
精密栄養学の視点から見ると、脂肪の蓄積は単なるカロリー過多ではなく、
・血糖値の急上昇
・ミネラルやビタミンの欠乏
・腸内環境の乱れ
・慢性的な炎症状態
といった「代謝のアンバランス」が背景にあることが分かっています。
栄養をただ摂るだけでなく、体の中で正しく使える状態に整えることが、脂肪をためにくい体質への土台となります。
また、ピラティスの実践を通じて姿勢や呼吸が整うと、体幹の安定と血流改善が促され、
・内臓の位置が正されることで代謝が上がる
・胸式呼吸により肋骨まわりが広がり、脂肪の蓄積しやすい部位の血流が改善される
といった、運動以上の深い身体的変化が生まれます。
脂肪はただ「落とすもの」ではなく、今の体の状態を映し出すサインでもあります。
自分の身体の声に耳を傾けながら、
・何をどう食べるか(栄養)
・どう動くか(姿勢と呼吸)
この2つのバランスを見直すことで、無理のないリズムで整えていくことができます。
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医療免責事項
本記事の情報は一般的な知識の提供を目的としており、医学的アドバイスに代わるものではありません。
体質や体調によって必要なケアは異なります。
不調の改善や健康管理に関して不安や疑問がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。