Super Agersの本の要約①|ライフスタイル+という考え方
こんにちは、AKIです。
半年前に、Super Agersの内容をまとめた記事を公開したところ、読んでくださった方から「この本の内容をもう少し詳しく知りたい」という声をいくつかいただきました。
私自身、本書がまだ日本語に翻訳されていないこともあり、海外の最新の知見や、アメリカと日本の違いに触れられる点に興味を持つ方が多いのだなという印象を受けました。
そこで今回の記事では、読者の方から特に関心の高かった 第3章 ライフスタイル+(プラス)を取り上げます。
ライフスタイル+とは?健康を広く捉える新しい視点
著者が示しているのは、健康寿命を伸ばすためには「食事・運動・睡眠」という基本に加えて、環境要因や社会的つながりなど“より広い生活領域”も影響するという考え方です。
具体的には次のような要素が含まれます。
大気汚染や化学物質、マイクロプラスチックなどの 環境ストレス
騒音・住環境など、日常に潜む負荷
社会的孤立やストレスといった 心理・社会的要因
食事の質、とくに超加工食品(UPF)がもたらす影響
有酸素運動だけでなく、筋力・バランスなど 身体活動の質そのもの
こうした「生活のあらゆる選択」が、静かに、しかし確実に健康寿命へ影響していくというのが、ライフスタイル+の核心です。
興味深いのは、これらの多くが 医療やサプリではなく、日々の暮らしそのもの で変えられるという点。
そして、日本とアメリカでは食品環境も生活リズムも異なるため、海外の研究を“そのまま”ではなく、私たちの生活にどう落とし込むか が大切になります。
食事|毎日の選択が未来の健康をつくる
ライフスタイル+の中で著者が特に強調しているのが 食事のクオリティ です。
その中でも大きなテーマが、超加工食品(UPF:Ultra Processed Foods)をいかに減らすか という点でした。
アメリカではUPFの摂取割合が非常に高く、近年の研究でも「慢性炎症」「体重増加」「認知機能の低下」などの影響が繰り返し指摘されています。
そして、この傾向は日本でも年々強まっています。
コンビニ食品や菓子パン、甘い飲料、揚げ物など、日常の中で何気なく口にしているものの中にUPFが多く含まれています。
超加工食品(UPF)がなぜ問題なのか
UPFには共通した特徴があります。
砂糖・油脂・塩分が過剰
人工甘味料や添加物が多い
精製された炭水化物が主体
食物繊維やビタミンが不足
噛む量が少なく、食べすぎにつながる
著者は、これらが代謝のバランスを乱し、ゆっくりと慢性炎症を引き起こす点を特に問題視しています。
これは精密栄養学で語られている内容とも一致しており、腸内環境、血糖コントロール、ホルモンバランスにも波及する領域です。
地中海式食事がなぜ注目されるのか
本書の中で引用されている研究では、世界的に健康効果が評価されている 地中海式食事(Mediterranean Diet) がいくつも紹介されています。
地中海式食事の特徴は次のとおり。
野菜・果物・豆類・ナッツが中心
オリーブオイルを主要な脂質源にする
魚介類を定期的に食べる
赤身肉は控えめ
発酵食品が自然と多くなる
精製小麦や砂糖の摂取が少ない
“特別な食事法”というより、シンプルで素材を大切にする食べ方 が自然に健康を支える、そんな印象です。
今日からできる実践ポイント
難しいことはしなくて良く、毎日の小さな習慣の積み重ねで十分に変化が出ます。
1. 原材料が短い食品を選ぶ
材料が少ないほど、UPFの可能性が低くなる。
2. 良質な油を使う
揚げ物は控え、調理はオリーブオイル中心に。
3. 魚を週2回ほど取り入れる
特に青魚は抗炎症作用のある脂肪が豊富。
4. おやつを“噛む食品”にする
ナッツや果物、ゆで卵など。
噛むことで満腹感が生まれ、過食を防ぎやすい。
5. 夜遅い食事を避ける
寝る3時間前までに食べ終えるのが理想。
食事は“引き算”から始めるのが効果的
著者は、健康的な食事づくりは「何を食べるか」より「何を減らすか」から考えるべきと述べています。
これは実際のカウンセリングでも非常に実感があります。
朝の菓子パンをおにぎりに変える
スナック菓子をナッツに置き換える
加工肉を減らし、魚や豆に寄せる
こうした“引き算の選択”が、ライフスタイル+の最初の一歩です。
運動|最も効果の大きい“生活の投資”
ライフスタイル+の中で、著者が強く訴えているのが「運動は、最も効果の大きい医学的介入である」という点です。
これは薬でもサプリでもなく、“自分自身の体を動かすこと”が、健康寿命に対して非常に大きな影響を持つという意味です。
運動のメリットは単なる体力向上に留まらず、
血糖コントロール
脳の可塑性(学習能力・集中力)
ホルモンバランス
睡眠の質
メンタルヘルス
免疫機能
こうした全身の働きに同時に好影響をもたらします。
“十分に動く”ではなく“どう動くか”が鍵
本書の第3章で繰り返し強調されているのは、単に長時間歩けばいい、汗をかけばいい、という話ではなく「動きの質」 に目を向けることの重要性です。
具体的には、
有酸素運動(心肺機能の向上)
筋力トレーニング(特に下半身と体幹)
バランスと安定性のトレーニング
姿勢・アライメントの改善
この4つがバランスよく行われることで、老化のスピードが大きく変わるとされています。
この考え方は、ピラティスの核そのものであり、筋力・柔軟性・安定性が「全身のつながり」として働くことで身体が無理なく、美しく、そして強くなっていきます。
週150分の中強度運動という現実的な目安
著者が引用している研究では、週150分の中強度の運動で、死亡リスクが25%低下する
というデータが示されています。
150分は1日換算すると20分程度。
ハードな運動である必要はありません。
少し息が弾む速さでのウォーキング
自転車での移動
ピラティスのセッション
軽い筋トレ
ヨガ
こまめな階段利用
こうした“負担が少なく継続しやすい動き”でも十分効果があります。
日本とアメリカの違いを考えてみる|歩いているようで“使えていない”
アメリカでは車移動が中心で「歩かない文化」が問題視されていますが、日本では逆に「歩いているのに動いていない」という現象が起こりがちです。
どういうことかというと、歩行量はあるものの、
骨盤が後傾
背中が丸まる
体幹が使えていない
足裏のアーチが落ちている
股関節がうまく使えていない
といった理由で、歩行の質が低い ケースがかなり多いのです。
結果として、
太ももばかり疲れる
腰痛や膝痛が出やすい
消費カロリーが伸びない
有酸素運動としての効果が薄い
といったことが起きやすくなります。
ここでピラティスの役割が非常に大きく、Studio U.でも「普段歩いているのに全然使えていなかった」という声がよく聞かれます。
運動は“未来の自分への貯金”
著者は、運動の効果を「人生で最もリターンの大きい投資」として紹介しています。
年齢に関係なく、筋力は鍛えれば必ず応えてくれます。
姿勢は整えば、呼吸が変わり、内臓の働きが変わります。
歩き方が変われば、毎日の生活そのものが運動になります。
まさにライフスタイル+の中心となるテーマであり、
日々の動き方を少し見直すだけで、未来の健康は大きく変わります。
睡眠|最適な“7時間”と質を決める条件
ライフスタイル+で睡眠が重要視される理由は、睡眠が 脳の修復・代謝調整・免疫機能 といった生命活動の根幹に直結しているためです。
著者は「長く眠ればよいわけではない」という点を強調しており、研究では 最も死亡率が低い睡眠時間は7時間前後 という結果が繰り返し示されています。
これは短すぎても長すぎてもリスクが増える “U字カーブ” の関係で、脳の老廃物の排泄、ホルモン分泌、血糖コントロールなどが最適化されるのがこの付近と考えられています。
睡眠が健康寿命に影響する理由
本書では、睡眠不足が以下の領域に影響すると述べられています。
認知機能の低下(特に記憶と注意力)
血糖の乱れ(インスリン抵抗性の上昇)
慢性炎症の促進
免疫機能の低下
ホルモンバランスの乱れ(食欲・ストレス・成長因子など)
一晩の睡眠不足であっても、これらの指標が変動することが研究で示されており、“睡眠の質”が身体の内部で起こる変化を左右することが強調されています。
睡眠の質を左右する3つの要素
著者は、睡眠の質を左右する要素として「光」「体内時計」「行動パターン」 の3つを挙げています。
1. 光のコントロール
朝の光は体内時計のリセットに不可欠。
夜の強い光は脳を覚醒させ、深い睡眠を妨げる。
2. 体内時計
食事・運動・光・温度が体内時計を動かす“シグナル”となる。
夜遅い食事はリズムを乱し、睡眠の深さと血糖値に影響する。
3. 行動パターン
起床時間の固定、カフェイン摂取の時間、夕食のタイミングなどが、深い睡眠やレム睡眠の質を決める。
これらの要素は互いに関連し、総合的に整うことで睡眠の“深さ”が安定すると説明されています。
今日からできる実践ポイント
睡眠改善は複雑なように見えて、基本はシンプルです。
朝起きたら 5〜10分でいいので外の光を浴びる
カフェインは 午後以降控える
夕食は理想的には 寝る3時間前まで
温かいシャワーや入浴で 体温リズムを整える
寝る前のスマホ・明るい照明を避ける
特別な方法より、日常のリズムを整えることが最も効果的だと本書は示しています。
睡眠は“老化のスピード”を左右する
興味深いポイントとして、本書では睡眠不足が脳の老廃物処理システム(グリンパティックシステム)を低下させる可能性も紹介しています。
これが長期的には認知機能の低下につながり、「高齢期の脳を守るために、睡眠は不可欠」と位置づけられています。
7時間前後の質の良い睡眠は、脳の健康、代謝、免疫、ホルモンのすべてに波及する“生命の基盤”のような存在です。
環境|目に見えない“慢性炎症リスク”
ライフスタイル+の中で著者が大きく取り上げているテーマの一つが環境が健康寿命に与える影響 です。
食事・運動・睡眠といった行動習慣だけでなく、「空気」「水」「騒音」「化学物質」といった外的な要因が老化のスピードにじわじわと影響しているという視点が紹介されています。
興味深いのは、環境要因は“自分では気づきにくい”のに、代謝・免疫・ホルモン・神経系に長期的なストレスをかけ続ける 可能性があるという点です。
大気汚染は静かな健康リスク
本書では、世界中でデータが蓄積されているPM2.5(微小粒子状物質) の影響が特に取り上げられています。
PM2.5の暴露は
心血管疾患
呼吸器疾患
認知機能の低下
免疫の不均衡
といったリスク上昇と関連し、年間の死亡率にも影響するという研究結果が示されています。
アメリカの都市部では特に深刻ですが、日本でも季節や地域によって濃度が変動し、毎日の暴露量は決して無視できません。
PFAS:永遠の化学物質
こちらは過去の記事をご覧ください
マイクロプラスチック:体内に入り込む新しいストレス
近年の研究で明らかになってきたのが、食品・飲料・水道水・大気中のマイクロプラスチック の存在です。
著者は、これらの微細な粒子が消化管や血液中に入り込むことで炎症・酸化ストレス・細胞機能への影響が疑われていると述べています。
特にボトルウォーターや包装食品では濃度が高い傾向があり、生活のあらゆる場面で無意識のうちに摂取してしまう可能性があります。
騒音や住環境も「ストレスホルモン」を押し上げる
川沿い・交通量の多い道路の近く・飛行機の航路など、騒音レベルが高いエリアではコルチゾール(ストレスホルモン)の慢性的上昇 が観察されているという研究も紹介されています。
騒音は気づきにくいストレス源ですが、睡眠の質・メンタルヘルス・心拍変動(自律神経の指標)にも影響を与えることがわかっています。
今日からできる“現実的な対策”
本書では、環境問題を“完璧に避けることは不可能だが、暴露量を減らすことはできる”と述べています。
できる範囲で、次のような選択が紹介されています。
1. ペットボトル飲料を減らす
特にマイクロプラスチック対策として効果が大きい。
2. 室内の換気をこまめに行う
大気汚染のピーク時間を避け、空気を循環させる。
3. テフロン加工の調理器具を使いすぎない
使う場合は傷んだものを早めに買い替える。
4. 防水・防汚加工された製品の使用を必要最低限にする
PFAS削減に効果的。
5. 騒音対策として寝室の環境を整える
遮音カーテンや窓の位置を工夫するだけでも負荷を減らせる。
環境は“見えないが確実に効いてくる健康要因”
ライフスタイル+の視点では、環境は「自分で選べないもの」ではなく、“小さな選択で暴露量を減らせる領域” として扱われています。
すぐに変えるのは難しいものもありますが、日々の食や生活用品の選び方、空気の入れ替えといった小さな工夫だけでも長期的な影響は大きく変わります。
まとめ|ライフスタイル+は“難しい健康法”ではない
ライフスタイルプラスという考え方は、特別な健康法や大きな変化を求めるものではありません。
本書が伝えているのは、毎日の中で「できること」を一つずつ選んでいくことが、未来の健康をつくるという、とてもシンプルで力強いメッセージでした。
食事、運動、睡眠、環境、社会的つながり。
どれも私たちの生活に深く関わっているテーマばかりで、今日から少しずつ整えていけるものばかりです。
そして、今回ご紹介した第3章「ライフスタイル+」以外にも、本書には興味深い内容がまだたくさんあります。もし「この章も知りたい」「ここをもっと詳しく読んでみたい」といったご要望があれば、今後の記事の中で取り上げていこうと思います。
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