がん治療の3つの選択肢を知るということ― 標準治療・先進医療・自由診療を整理する ―
こんにちは、AKIです。
前回のコラムに引き続き、今回も少し医療に関するテーマを取り上げたいと思います。
普段はピラティスや栄養のお話が中心ですが、最近は「医療制度」や「予防」という視点で学び直す機会があり、その延長で気になったことの一つが がん治療 でした。
がんという病気は、とても身近でありながら、いざという時に情報が多すぎて何を信じていいのか分からなくなる分野でもあります。
もし大切な家族や友人、身近な人が突然診断を受けたら。
自分自身が向き合うことになったら――
冷静に判断することは簡単ではありません。
だからこそ、
「今の時点で、どんな選択肢があるのか」
「それぞれにどんな特徴や違いがあるのか」
を知っておくだけでも、心の準備につながるのではないかと思いました。
私自身が調べた内容を、できるだけ分かりやすく整理して、今回は皆さんと共有したいと思います。
標準治療とは?
― 科学的に「効果と安全性」が認められた、がん治療の基盤 ―
最初に押さえておきたいのが、
標準治療と呼ばれる、もっとも一般的で、もっとも信頼性の高いがん治療の選択肢です。
これは「普通の治療」という意味ではなく、科学的エビデンスに基づいて、効果と安全性が確立されている治療 のことを指します。
■ 標準治療が確立されるまでの“長い道のり”
がん治療が「標準治療」と認められるには、
非常に厳密で長いプロセスを通過しなければなりません。
基礎研究
細胞レベル・動物実験などで「効果があるか」を確認する段階。
臨床試験(治験)
人での安全性や効果を、段階を追って検証します。
第Ⅰ相試験
少人数で安全性を確認する段階。
第Ⅱ相試験
効果がありそうかどうかを探る段階。
第Ⅲ相試験(最も重要)
大人数で「本当に効果があるのか」「既存の治療より優れているのか」を比較し、
医療として採用できるかどうかを厳しくチェックします。
この 第Ⅲ相試験をクリアすることが、標準治療になるための最大のハードル です。
別の言い方をすれば、
標準治療は“最終的に患者さんにとって利益が証明された治療”だけが採用される
ということです。
■ 標準治療の主な種類
標準治療には、がんの種類や進行度によってさまざまな治療法が組み合わされます。
代表的なものは以下の3つです。
手術療法(外科治療)
がんを直接取り除くもっとも古典的かつ強力な治療。
化学療法(抗がん剤)
薬を用いてがん細胞の増殖を抑える治療。
放射線治療
放射線でがん細胞のDNAを破壊し、増殖を抑える治療。
これらは単独で行われることもありますし、
手術+抗がん剤
抗がん剤+放射線
など、複合的に行われるケースも多く存在します。
■ 知っておきたいポイント
標準治療とは、「確率的に見て一番“治る可能性”が高い治療」を国が公式に認めたものです。
そのため、迷ったときにはまず標準治療が検討されます。
治療を受ける側にとっての“基準点”になる存在とも言えます。
先進医療
― 標準治療の“一歩先”にある、保険適用外の最先端医療 ―
標準治療が「効果と安全性がすでに確立された治療」であるのに対して、先進医療は、将来の標準治療候補となる“最先端の治療” です。
まだエビデンスが完全に揃っていないため、健康保険の適用外 になりますが、国から特別に認められたものだけが「先進医療」として実施されます。
■ 先進医療の特徴
最先端の医療技術が受けられる
標準治療よりも新しい仕組みや、最新テクノロジーを使った治療が多い。
保険診療と併用できる(混合診療ではない)
これは誤解されやすい部分ですが、国が認めた「先進医療」だけは例外として保険診療と併用できる制度になっています。
(自由診療とはここが大きく違う点です)
費用は高額になりやすい
先進医療にかかる技術料は全額自己負担。
ただし、標準治療部分は保険が使えるため、全額が自由診療になるわけではありません。
■ 実際にある先進医療の例
代表的な先進医療には次のようなものがあります。
重粒子線治療・陽子線治療
正常組織への負担を抑えながら、がんを狙い撃ちできる最先端の放射線治療。
ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ)※一部は保険適用へ移行
身体への負担が小さく、精密な手術が可能。
遺伝子解析を用いた個別化医療(ゲノム医療)
がんの“遺伝子の特徴”に合わせて治療法を決める新しいアプローチ。
これらはまさに、「未来の標準治療」になる可能性を持つ“最前線の医療” と言えます。
■ メリットと課題
メリット
“今”標準治療が効かない患者さんが、新たな選択肢を持てる
標準治療より副作用の少ない可能性
将来的な個別化医療の第一歩
課題
費用が大きくなる
対応施設が限られている
長期的な効果はまだ確立されていないものもある
「先進医療」は、“希望の選択肢”として確実に広がりつつある
しかし同時に、経済的な負担や地域差が依然として存在する――
これが現状のリアルです。
自由診療
― 可能性とリスクの両方を持つ、“自分で選ぶ医療”
3つ目が 自由診療(自費診療) と呼ばれる領域です。
自由診療とは、健康保険の適用を受けずに、全額自己負担で受ける治療 のことを指します。
国内外の最新治療や、標準治療・先進医療には含まれない療法もここに含まれます。
がん領域では、たとえば
免疫チェックポイント阻害薬の自費投与
海外の未承認薬を用いた治療
免疫細胞療法 (自分の免疫細胞を増やして戻す治療の一種)
などが、一例として挙げられます。
■ 免疫細胞療法という選択肢
自由診療の代表例のひとつが、免疫細胞療法 です。
これは、自分の血液などから取り出した免疫細胞を、体の外で増やしたり、活性化させたりして、再び体内に戻すことで“がんと戦う力”を高めようとする治療です。
自分自身の細胞を使う
抗がん剤のような強い副作用が比較的少ない場合もある
といった点から、標準治療だけでは不安な方や、他の選択肢を探したい方が検討するケースもあります。
一方で、どの程度の効果が期待できるのか、どのがん種・ステージに有効なのか、エビデンスの厚さには治療法によって差があります。
そのため、「免疫細胞療法=がんが必ず治る魔法の治療」というイメージで捉えるのではなく、“メリットと限界を理解したうえで、選択肢の一つとして検討する” ことが大切です。
■ 自由診療で特に大切な2つのポイント
自由診療を考えるとき、とても重要になるポイントが大きく2つあります。
① 信頼できる医師・医療機関を選ぶこと
自由診療の世界は、情報も玉石混交です。
効果が科学的に検討されている治療
まだ十分なデータがないにもかかわらず、誇大な宣伝がされている治療
が混在しているのが実情です。
だからこそ、
きちんと 標準治療や先進医療の情報も説明してくれる医師か
メリットだけでなく、限界やリスク、費用対効果も率直に話してくれるか
通院の負担、生活への影響も含めて一緒に考えてくれるか
といった点をよく見て、「人」と「場所」を選ぶことがとても大切です。
② 費用・経済面を事前にしっかり相談すること
自由診療は、基本的に全額自己負担です。
1回あたりの治療費が高額になるケースも多く、
数ヶ月〜年単位で続けると、トータルの費用は決して小さくありません。
1回あたりいくらかかるのか
どのくらいの回数・期間を想定しているのか
途中でやめる場合はどうなるのか
ほかの治療(標準治療や先進医療)との併用はどうするのか
こうした点を、事前に綿密に打ち合わせしておくことがとても重要です。
「お金のことを聞くのは申し訳ない」と感じる方もいますが、
治療は生活の上に成り立つもの。
無理のない範囲で続けられるかどうかは、治療の一部といって良いくらい大切な要素です。
自由診療は、うまく活用できれば「標準治療だけでは届かない部分をカバーしてくれる」可能性もありますが、一方で、情報不足のまま高額な治療に踏み出してしまう危うさも併せ持ちます。
だからこそ、信頼できる医師・医療機関を選び、費用を含めて納得したうえで決める。
この姿勢が何より大切になってきます。
まとめ
がんの治療には「標準治療」「先進医療」「自由診療」の3つの選択肢があります。
どれが正しいというわけではなく、それぞれに 役割・メリット・限界 があり、状況によって必要な選択が変わります。
今回ご紹介した内容は、「今すぐ不安になるための情報」ではありません。
大切なのは、もし自分や大切な誰かが“選ばなければならない立場になったとき”、慌てずに判断できる土台をつくることだと考えています。
そしてもう一つ、誤解のないようにお伝えしたいのは、がんをはじめとする多くの病気は日々の小さな取り組みが、将来の大きな差につながるという事実です。
食事、睡眠、ストレスケア、運動、姿勢、呼吸、そして血糖値の安定。
これらはすべて、体の「がんばりすぎ」を減らし、長期的な健康リスクを下げる力を持っています。
だからこそ、特別なことを始める必要はありません。
まずは“自分の体を知る”ことから。
Studio U. では
▪ 健康カウンセリング
血液データや生活習慣をもとに、一人ひとりに合った食事・栄養・セルフケアを提案します。
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医療の進歩に頼るだけでなく、自分の体と向き合う小さな積み重ねが、未来の自分を守る力になる。
そんな視点を、今日のコラムが少しでも届けられていたら嬉しいです。
興味のある方は、気軽に Studio U. の各サービスをご覧ください。
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医療免責事項
本記事の内容は、一般的な健康情報や知識の共有を目的としたものであり、医師・医療機関による診断や治療に代わるものではありません。
体質や体調には個人差があります。
不調の改善や健康管理に関して不安や疑問がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。