「ほぐす」って、どういうこと?

ピラティスを始めた頃から、UKIによく言われてきたことがあります。

それが、「まずは、ほぐすことが大事」という言葉。

Studio U.に通ってくださっている皆さんの中にも、インストラクターから

  • 「そこ、力みすぎかも」

  • 「もう少し脱力してみましょう」

なんて声をかけられたこと、あるのではないでしょうか?

でも、「ほぐす」って実際どういう意味なんでしょう?

ストレッチ?マッサージ?深呼吸してリラックスすること?

……よく耳にする言葉なのに、よく考えると少し曖昧だったりもします。

ピラティスでいう「ほぐす」とは、単に“力を抜く”とか“リラックスする”ことではなく、

筋肉や筋膜のこわばりをゆるめて、自然な動きを取り戻すこと。

つまり、体の流れやつながりを“回復”させること。

これが本質です。

特に大事なのが、筋膜という存在。

筋膜は筋肉を包む薄い膜で、全身に張り巡らされています。

この筋膜が“ねじれたり”“縮んだり”すると、筋肉が動きにくくなったり、呼吸が浅くなったり、思わぬ不調にもつながります。

逆に、筋膜がスムーズに動く状態を保てると――

  • 呼吸が自然に入りやすくなる

  • 関節の動きがなめらかになる

  • コアが働きやすくなる

といった変化が、体の内側からじわじわと起こってくるのです。


なぜ「ほぐすこと」が大切なのか?

ピラティスをはじめとしたボディワークでは、

「まずは、筋肉や関節をほぐしましょう」とよく言われます。

でも、なぜ「鍛える」よりも先に「ほぐす」のでしょうか?

筋肉の“硬さ”は、ブレーキになる

筋肉や関節がこわばっていると、体はその部分をかばうようにして別の部位を過剰に使うようになります。

その結果、肩が張ったり、腰が痛くなったり……といった“本来の使い方”ではない動きになってしまいます。

たとえば、ギシギシに固まったゴムを無理やり引っ張っても、うまく伸びないどころか切れてしまいそうになりますよね。

私たちの体も同じで、動きにくい状態のまま「鍛える」ことは、かえって負担や痛みを生みやすくなるのです。

ピラティスは「整える → 鍛える」の順番

ピラティスでは、「姿勢を整え、動きを整える」ことがとても大切にされています。

いきなり筋力をつけることを目指すのではなく、まずは体が自然に動ける“ニュートラル”な状態を取り戻すこと。

この“整った状態”に近づけるために必要なのが、まさに「ほぐすこと」なのです。

筋膜がゆるむと、呼吸も変わる

特に見落とされがちなのが、筋膜(きんまく)と呼ばれる膜の存在です。

筋膜は全身を覆うボディースーツのようなもので、縮んだりねじれたりすると、その影響は遠く離れた場所にも伝わります。

  • 背中の筋膜が張っている → 肋骨が動きにくくなり、呼吸が浅くなる

  • 足の裏の筋膜が固い → 骨盤の動きが悪くなり、腰に負担がかかる

このように、筋膜の状態は呼吸・姿勢・動きに直結しているのです。

「鍛える前に、まず整える」ことが回復の第一歩

現代は、デスクワークやスマホの時間が長く、

「動かしていないのに疲れている」「休んでいるのに凝っている」という人がとても多くなっています。

そんな体には、いきなりのエクササイズよりもまず、緊張をゆるめて「本来の動き」に戻すケアが必要です。

そしてこれは、単に体をラクにするためだけでなく、

呼吸や血流、神経の働きを回復させ、内側からのエネルギーを巡らせることにもつながっていきます。


よくある“力みグセ”の正体

私たちは普段の生活のなかで、無意識にいろんな場所に「力み」をためています。

ピラティスのレッスン中でも、インストラクターに

「そこ、ちょっと力入りすぎかも」

「肩の力、抜いてみましょう」

と声をかけられたことがある方は多いのではないでしょうか。

でもこの「力み」、実際にはどんな状態を指すのでしょうか?

力みは「がんばりグセ」から生まれる

  • 猫背で前のめりの姿勢をキープしてしまう

  • つい歯を食いしばってしまう

  • 気づいたら肩が上がっている

これらの状態、実はすべて「緊張した筋肉がゆるまず、働きすぎている状態」です。

ピラティスではこれを「代償動作(だいしょうどうさ)」とも呼びます。

たとえば、腹筋を使いたい動きなのに、代わりに首や腰に力が入ってしまう——

これは、本来使いたい筋肉がうまく働けず、別の筋肉で“がんばっている”サインです。

筋肉は「使いすぎ」より「使われなさすぎ」で固まる

一見、力んでいる=使いすぎのように思えますが、実際には、動いていない部位ほど“こわばる”傾向があります。

  • 長時間同じ姿勢で座っている

  • 呼吸が浅く、肋骨がほとんど動いていない

  • お尻の筋肉が使われず、太ももやふくらはぎが過緊張している

こうした状態では、筋肉や筋膜が潤いを失い、ガチガチに固まってしまいます。

この“隠れ緊張”が、体のバランスを崩してしまうのです。

「力を抜く」は技術

意外に思われるかもしれませんが、

ピラティスにおいては「力を抜くこと」も重要なスキルです。

緊張している場所を見つけ、

ゆるめる → 本来使いたい筋肉に切り替える

この流れを身につけることで、体は省エネで効率的に動けるようになっていきます。

「緊張=悪」ではないけれど…

もちろん、緊張や力みがすべて悪いわけではありません。

大切なのは、オンとオフの切り替えができること。

ずっと力が入っている状態は、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるようなもの。

意識的に力を抜く練習をすることで、本当に必要なときに“適切な力”が出せる体になります。


3つの部位+番外編:「ほぐす」べきはここ!

ピラティスをより快適に、より深く楽しむためには、筋肉の緊張をゆるめ、動きやすい状態を整えることがとても大切です。

ここでは、特に日常でこわばりやすい3つのポイントと、私が個人的に強く実感した「番外編:脛(すね)」を含めたケア法を紹介します。

① 背中・肩甲骨まわり:呼吸が入りやすくなる“上半身の解放”

ここをほぐすと:

  • 肋骨が動きやすくなり、呼吸が深くなる

  • 肩の可動域が広がり、巻き肩や首こりの改善に

  • ピラティスで「胸式呼吸」がしやすくなる

やり方(ホームローラー使用)

  • ローラーを背中に当て、両手を頭の後ろに置き仰向け

  • 肩甲骨の間を中心に、ゆっくり上下に転がす

  • 胸を開くように、静止して深呼吸するのも効果的

② お尻(骨盤まわり):体幹を支える“土台”の緊張をゆるめる

ここをほぐすと:

  • 骨盤の動きがスムーズに

  • 反り腰や腰痛の軽減につながる

  • ピラティスの「コアの安定」が自然に引き出される

やり方(ホームローラー使用)

  • ローラーに浅く座り、片側のお尻に体重をかけて前後に転がす

  • 「痛気持ちいい」場所を見つけたら小さく動かしてキープ

  • 反対側も同様に

③ 足裏:全身のつながりを整える“出発点”

ここをほぐすと:

  • 地面を踏みしめる感覚が戻り、歩行や姿勢が安定

  • 足の感覚が目覚め、全身のバランスが整いやすくなる

やり方(ボールやローラー使用)

  • かかとからつま先までゆっくり前後に動かす

  • 固い場所では円を描くようにほぐす

  • 1〜2分/足が目安

番外編:

脛(すね)—一番“痛かった”けれど、ほぐしてよかった場所

これまでいろいろな部位をほぐしてきた中で、一番「痛い!」と感じたのが、“すね”の部分でした。

ホームローラーで初めてすねをほぐしたときは、とにかくびっくりするほどの痛み。

「これって本当にエクササイズになってるの?」と、正直疑問に思ったほどです。

でも、毎晩少しずつ続けているうちに、その痛みが“痛気持ちいい”に変わり、少しずつ緩んでいく感覚が出てきました。

そして、あるときふと気づいたんです。

歩くときに脚が軽い。

朝の立ち上がりが楽。

階段の上り下りでの違和感も減っている。

張っていたすねをゆるめただけで、日常の動きが想像以上にスムーズに、快適になっていたんです。

【すねのほぐし方(ホームローラー使用)】

  • 四つ這いの姿勢から、片足のすねをローラーに乗せる

  • 足首から膝下までを、ゆっくり前後に転がす

  • 張りが強い部分では、数秒キープして呼吸を深く入れるとより効果的

【ひとことメモ】

すねの筋肉(前脛骨筋など)は、姿勢の安定や歩行の際のつま先の上げ下げなど、意外と重要な働きを担っています。

立ち仕事や運動、ウォーキングが多い方ほど負担が溜まりやすく、緊張しやすい部位でもあります。

見落とされがちな場所ですが、日常をもっと快適にするヒントが隠れているかもしれません。

ぜひ一度、試してみてください。


まとめ:「ほぐすこと」は、“使っていない筋肉”に気づくためのセルフケア

「ほぐす」という行為は、ただ疲れを取るだけのリラクゼーションではなく、

“気づかずにこわばっていた場所”に意識を向けるための第一歩です。

ピラティスでよく使われる筋肉を鍛えることも大切ですが、

実はそれ以上に、“使っていない筋肉”に気づき、目を向けることが、姿勢や動きの改善につながります。

例えば、普段の生活であまり動かせていない筋肉や、

無意識に緊張しっぱなしになっている場所を、

やさしく“ほぐす”ことで、そこに血流や神経の働きが戻ってきます。

ほぐしグッズのご案内

Studio U.では、セルフリリースに役立つ「BLACKROLL(ブラックロール)」の販売を取り扱っています。

硬すぎず柔らかすぎない絶妙な反発力で、筋肉の緊張をじんわりほぐすのに最適なツールです。

気になる方は、ぜひセッションの前後やインストラクターにお気軽にお声がけください。

あなたの体に合った使い方やケア方法を、丁寧にお伝えします。

ほぐすことで内側の流れも変わる

筋肉が緩むと、呼吸が深まり、内臓の動きや自律神経のバランスにも良い影響を与えます。

呼吸や循環、消化といった“体の内側の機能”もまた、筋肉の緊張や姿勢のクセと深くつながっているのです。

体の緊張がゆるみ、巡りが生まれると、

それはやがて、思考や感情の流れにも影響を与えてくれます。

小さな「気づき」から整っていく

「ここ、固いかも」「意外と力が入ってるな」

そんな小さな気づきこそが、自分を整える大切な入り口。

ピラティスやストレッチの前だけでなく、

日常生活の中で“ほぐす時間”をほんの少しでも持つことで、

本来の体の動きや自然な呼吸が戻ってきます。

今日も、自分の体にそっと耳を傾けてみましょう。

“使っている筋肉”も、“使っていない筋肉”も、どちらも大切な自分の一部だからこそ。

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