PFAS(有害な長期残留化学物質)について知ろう

こんにちは、AKIです。

前回のコラムでは「がん治療の選択肢」についてお伝えしました。

治療法を知ることはもちろん大切ですが、同時に“なぜ病気になるのか”という背景要因 にも目を向けることが必要だと改めて感じました。

その中の一つに、近年世界的に問題視されている PFAS(ピーファス)という長期残留性化学物質 があります。

PFASは、海外では発がんリスクなどとの関連が指摘されることもあり、がんというテーマと全く無関係とは言い切れない側面があります。

そうした理由から、今回このPFASを取り上げてみたいと思います。

調理器具、防水スプレー、食品包装、水道水、衣類…

普段の生活の中で知らないうちに触れている可能性のある物質だからこそ、まずは正しく知ることが安心につながります。

それではここから、PFASとは何か、どのように体に入るのか、どんなリスクがあるのか――そして私たちが今日からできる対策について見ていきましょう。


PFASとは? ― PFOS・PFOAが示す“永遠に残る化学物質”

PFAS(ピーファス)とは、水や油をはじき、熱にも強く、ほとんど分解されない有機フッ素化合物の総称です。

その種類は1万以上と言われています。

その中でも特に問題視されているのが、

・PFOS(ピーフォス)=パーフルオロオクタンスルホン酸

・PFOA(ピーフォア)=パーフルオロオクタン酸

という2つの代表的な物質です。

どちらも「完全にフッ素で覆われた構造」を持ち、自然界でほぼ分解されないという共通点があります。

■ 生活に広く使われてきた“便利すぎる化学物質”

PFOS・PFOAは

・フライパンのテフロン加工

・防水スプレー

・撥水加工の衣類

・食品包装紙

・泡消火剤

など、非常に多くの製品に使われてきました。

その一方で、環境中に出ると数十年〜数百年残るため、現在は世界的に規制が進んでいます。

■ 水に溶けて世界中へ広がる(高い水溶性)

PFOS・PFOAは“水に溶けやすい”という特徴があり、いったん環境に流れると、

・川

・湖

・海

・地下水

・雨水

へと簡単に広がっていきます。

しかも水に溶けるのに分解されないという非常に厄介な性質を持ち、永遠に残る化学物質と呼ばれています。

■ 北極でも検出されている ― 地球規模の汚染

国際調査では、北極のシロクマやアザラシの体内からPFOS・PFOAが検出されています。工場すら存在しない地域で発見されたのは、風・海流・雨・大気移動を通じて 地球全体に拡散している証拠 です。

■ 食物連鎖で濃縮し、私たちの体にも届く

水に溶けたPFASは海や河川の生態系に入り込み、

  1. プランクトン

  2. 小魚

  3. 中型魚

  4. 大型魚

  5. 最終的に私たち

という形で 生物濃縮 していきます。

つまり、汚染源から遠く離れた地域に住んでいても、食品や水を通じて取り込む可能性があるということです。


PFASが体に与える主な影響

PFAS、とくにPFOS・PFOAについては、世界中で「どんな健康影響があるのか」が集中的に調べられています。

ここでは、現時点でとくに指摘されているポイントをいくつか整理してみます。


PFASが体に与える主な影響

PFAS、とくにPFOS・PFOAについては、世界中で「どんな健康影響があるのか」が集中的に調べられています。

ここでは、現時点でとくに指摘されているポイントをいくつか整理してみます。

① 肝臓への負担(肝機能が乱れやすくなる)

PFASは体の中に入ると、主に“肝臓”に溜まりやすいと言われています。

・肝臓の酵素(AST/ALT)が上がりやすくなる

・脂肪がつきやすくなる(脂肪肝のリスク)

などの報告があり、「肝臓が一番影響を受けやすい臓器」 と考えられています。

② 発達への影響(妊婦さん・子どもは要注意)

妊娠中や小さな子どもは影響を受けやすい可能性が指摘されています。

・出生体重が少し下がる傾向

・発達への影響がある可能性

などが報告されているため、

世界的に 妊婦さんと子どものPFAS暴露を減らす方針 が進んでいます。

③ 免疫への影響(ワクチンの効き方に関係する可能性)

PFASの研究でとても注目されているのが 免疫力への影響 です。

・ワクチンを打ったときの“抗体”がつきにくくなる

というデータが複数報告されています。

もちろんすべての人に当てはまるわけではありませんが、

「免疫システムを弱める可能性」 は国際的に懸念されています。

④ コレステロールが上がりやすくなる

PFASの血中濃度が高い人ほど、

・総コレステロール

・LDLコレステロール

が高くなるという研究が多く出ています。

食生活・運動などとも関係するため「PFASだけが原因」とは言えませんが、脂質代謝に影響しやすい物質 と考えられています。

⑤ 甲状腺ホルモンの変化(ホルモンバランスが揺らぐ可能性)

甲状腺ホルモンは体温・代謝・気分などを調整する大事なホルモンですが、PFASはここに影響を与える可能性も示されています。

・TSHやT4などホルモン値が微妙に変化する

という報告があり、

ホルモンバランスが乱れやすくなる可能性 があると考えられます。

⑥ 発がん性について(“確実ではないが、無視はできない”という評価)

WHOの国際がん研究機関(IARC)は、PFASのうち PFOAを「発がん性あり(グループ1)」 と評価しています。

PFOSは 「可能性がある(グループ2B)」。

これは、

・一部のがんとの関連を示す研究がある

・免疫やホルモンへの影響が“発がんのプロセス”に関与しうる

といった理由です。

ただし、“PFASに触れたら必ずがんになる”という意味ではありません。

現状は、「長期的に見るとリスクを少し上げるかもしれない物質」というバランスの評価です。

ポイントは『正しく知って、できる範囲で減らす』こと

PFASは不安を煽るためのテーマではありません。

重要なのは、

  • 完全に避けることはできなくても

  • “減らす工夫”を積み重ねるだけで、体の負担は確実に減る

という視点で、選択肢は自分にあるという事を認識すること、だと個人的に思うところです。


PFAS規制の現状と、私たちができる現実的な対策



1. PFAS規制の現状



PFASは国際的に“健康リスクの高い化学物質”として問題視され、日本でも段階的に規制が強化されています。


  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸):2010年から製造・輸入禁止

  • PFOA(ペルフルオクタン酸):2021年から製造・輸入禁止




ただし注意したいのは、「禁止=安全」ではない という点です。


PFASは環境中で分解されにくく、過去に使用されたものが すでに土壌・河川・飲料水に残留し続けている ため、規制が進んでも暴露リスクはゼロにはなりません。




2. マイクロプラスチックとの併用リスク



PFASはプラスチック表面に吸着しやすい性質があり、近年は 「PFAS × マイクロプラスチック」 の複合曝露が問題になっています。


  • 海洋のマイクロプラスチックにPFASが付着

  • それを魚が食べ、さらに人へと移る

  • プラスチック容器の加熱でも微量のPFASが溶け出すことがある



環境汚染は“単体”では動かず、

複数の化学物質が連鎖的に体内へ入り込む仕組みが指摘されています。


つまり、「製造禁止されたからもう安心」とは言えず、これまでに環境へ放出されたPFASは、今も生態系の中を循環し続けているというのが現状です。




3. 私たちが今日からできる PFAS対策



PFASは“完全に避ける”ことはできません。

ですが、暴露を減らすことは可能です。

生活の中で取り入れやすいポイントをまとめました。



調理器具


  • テフロン加工(フッ素樹脂)をできるだけ避ける

  • 鉄・ステンレス・ホーロー・セラミックを選ぶ

  • 傷んだフライパンはPFASが溶け出しやすいので早めの交換を



食品包装の選び方



  • 耐油紙(グリースプルーフ加工)をなるべく避ける

  • ファストフードの包装紙、ポップコーン袋は注意




水の対策


PFASは水に溶けやすいため“飲料水対策”は重要。


  • 逆浸透膜(RO)浄水器が最も除去効果が高い

  • 家庭用なら活性炭フィルター+中空糸膜でも一定の低減効果

  • ペットボトル水は「PFAS検査済み」ブランドを選ぶ



製品選び



  • 「PFASフリー」「PFOAフリー」「フッ素フリー」の表示を確認

  • コスメ・衣類・アウトドア製品はPFAS使用例が多いため注意




プラスチックを減らす



PFASはプラスチックに吸着しやすいため


  • 使い捨て容器を減らす

  • プラ容器の電子レンジ加熱を避ける

  • ガラス・ステンレス製品を中心に


まとめ

PFASの話題は少し不安を感じるかもしれませんが、過度に心配しすぎる必要はありません。

大切なのは「知っておくこと」と「自分で選べるようにしておくこと」です。

たとえば我が家では、テフロン加工のフライパンも普通に使っています。

しかし、子ども向けに料理をするときは鉄製を使うなど、“用途や頻度に応じて使い分ける” という形で調整しています。

完璧に避けることが目的ではなく、

  • どういう時にリスクが高まるのか

  • 自分はどんな基準で選びたいのか

これらを知ったうえで「選択できる状態」にしておくことが、長い目で見れば自分や家族の健康を守るための大きな力になります。

今回は、そうした“判断のための小さなヒント”として、みなさんの暮らしに役立てば嬉しく思います。

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