未来の医療のあり方〜ダニエル・クラフトが語る「医療が病院から生活へ移動する時代」〜
こんにちは、AKIです。
育児休業中の今、日々のカウンセリング準備や学習サービスづくりを進めながら、自分自身の「健康への向き合い方」もアップデートしたいと感じることが増えました。
以前のコラムでは“がん治療の選択肢”についてお話ししましたが、その流れで、
「そもそも、これからの医療はどう変わっていくのだろう?」
という関心が自然と強くなりました。
そんな中で興味深い人物が、医師であり科学者であり、未来医療のキーパーソンでもあるダニエル・クラフト(Daniel Kraft) です。
彼は10年以上前から、「医療は病院の外へ出ていく」と繰り返し語り続けてきた人物。
たとえば、かつて音楽を聴くためにCDショップへ行っていた時代が“Spotifyでいつでもどこでも” に変わったように——
これからの医療は、“病院に行く” という場所の概念から解放され、日常生活そのものが健康管理の場になるというのがクラフトの主張です。
身体につけるウェアラブル、排泄データやホルモン変動を読み取るバイオセンサー、そして膨大なデータを解析するAI——。
これらが組み合わさることで、病気が“起きてから治す医療”から、“起こる前に気づく医療(予測医療)” へとシフトしていく。
今回のコラムでは、クラフトの描く未来像をわかりやすく整理しながら、
● なぜ医療は病院の外へ出ていくのか
● 未来医療を支えるテクノロジー
● 日本の課題と世界との差
● そして、今の私たちができること
この4つの視点を通じて「これからの健康との向き合い方」を一緒に考えていきたいと思います。
ダニエル・クラフトが描く「医療の未来」
ダニエル・クラフトが示す未来医療の姿はとてもシンプルで、しかし革新的です。
彼の主張を一言でまとめるなら、
「医療は“病院の中”から“私たちの日常”へ移動する」
というパラダイムシフトです。
■ 医療は「行くもの」から「常に身につくもの」へ
クラフトは、医療の変化を“音楽の変化”に例えます。
昔はCDショップに行かなければ音楽は買えず、聴きたい時にはプレイヤーが必要でした。
しかし今、音楽はポケットの中にあります。
Spotify などのストリーミングで、いつでも、どこでもアクセスできる。
クラフト曰く、医療もまさに同じ変化の途中にあるのです。
体調が悪くなったら病院へ行く
検査は年に1回の健康診断だけ
医師に症状を伝えて判断してもらう
これらは “過去の医療” の形。
これからはこうなります。
身体につけたセンサーが常時データを収集する
AIが兆候を早期に解析してアラートを出す
医師は「最終判断のプロ」として意思決定をサポートする
つまり、医療の中心が自宅や日常へ移動する ということ。
■ センサー・ウェアラブル・バイオマーカーが「身体の声」を数値化する
クラフトが特に注目しているのが、連続的な生体データ。
血糖値
心拍変動(自律神経の状態)
睡眠の質
炎症マーカー
排泄データ
ホルモンの変動
体温リズム
これらが常時モニターされ、身体の中の“変化”をリアルタイムで知れる時代 に突入しています。
症状が出る前の「兆候」を察知できれば、病気は“治すもの”ではなく “避けられるもの” に変わる。
■ 診断はAI、医師は最終レイヤー
クラフトは次のように語ります。
「AIは医療の95パーセントを担い、医師は最後の5パーセントで判断する」
つまり、AIはデータの海から規則性や異常値を瞬時に拾い上げ、医師は人間性と総合判断で最終的な意思決定を行う。
これにより、患者一人ひとりに “オーダーメイドの医療” が提供できる未来が開けます。
■ 病気の“芽”を摘む「予測医療」へ
クラフトが強調するのは、次の一点。
「未来の医療は、発症する前に働く」
病気の“芽”を摘む「予測医療(Predictive Medicine)」が世界中で急速に進んでいます。
そしてこれは、病院の外でデータが集まるからこそ可能になる方法なのです。
なぜ医療は病院の外へ出ていくのか?
ダニエル・クラフトが語る未来医療は、決して“夢物語”ではありません。
世界の医療構造そのものが 「病院中心では限界に近づいている」 ため、必然的に「日常へ拡張する医療」へ移行しているのです。
その背景を、わかりやすく5つのポイントで見ていきます。
1. 医療費が増え続け、持続できなくなりつつある
日本は超高齢社会のトップランナー。そして、医療費の増加スピードも世界でも有数です。
医療費は40兆円超
今後も年々増加
社会保障費が国家予算の3割以上を占める
このままでは「病気が増える → 医療費が膨らむ → さらに制度が圧迫される」というスパイラルから抜け出せません。
医療費を抑えつつ健康を維持するには、病気になる前に“兆候”を押さえる仕組み が必須です。
2. 病院中心モデルの限界(人手不足・専門医不足)
日本でもアメリカでも、医療現場の人手不足は深刻です。
看護師の離職率の高さ
医師偏在(都市部に集中し地方は不足)
外来の混雑
救急の受け入れ困難
この状態を病院だけで支えるのは難しい。
だからこそ、「セルフケア × テクノロジー × AI」 の組み合わせが世界で進んでいます。
3. 生活習慣病が“世界の医療負担の6割以上”を占める
糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満などの慢性疾患は、薬で治せるものではなく 生活習慣によって変わる病気 です。
つまり…
病院だけで医療を完結させること自体が構造的に不可能 なのです。
ダニエル・クラフトはこう語ります。
「未来の医療は、病気を“治す場所”ではなく、病気を“つくらない生き方”をサポートする仕組みになる」
まさに予防医療への移行は「必然」です。
4. デバイス・AI・ゲノム医療が急速に進化している
スマートウォッチ
持続血糖測定器(CGM)
ホルモン測定デバイス
皮膚パッチ型センサー
遺伝子解析
AIによる診断補助
これらの技術が、昔と違い 日常生活にフィットするレベルまで小型化・低価格化 しています。
つまり、病院の検査室に行かなくても、毎日のデータが取れる時代 に突入したのです。
5. 医療の中心が「治療」から「予測・予防」へ
テクノロジーの進化によって初めて可能になるのが、“症状が出ていない段階を察知する医療” です。
これはクラフトが繰り返し強調するテーマ。
発症前の炎症
自律神経の乱れ
ホルモンバランスの変化
血糖値の異常波形
ストレス負荷の蓄積
こうした「兆候」は病院で年1回測るだけでは絶対に分かりません。日常からデータを取り続けることで初めて見える世界です。
病院は“最終判断をする場所”へ
未来の医療では、病院は「治療のスタート地点」ではなく最終レイヤーになります。
日常 → センサー・AIが兆候を察知
問題があれば → 病院で医師が専門的判断
治療後 → 再び日常でデータを継続管理
この循環こそが、クラフトが描く「アップデートされた医療の姿」。
では、日本は果たしてどうでしょう?
ダニエル・クラフトが語る「病院の外へ出る医療」は、すでに欧米では現実に近づいています。では、日本はその流れに追いつけているのでしょうか。
日本の現状を一言でまとめると、
“病気になる人は増える、医療費は増える、でも医療のしくみは変わらない”
という、少し危うい状態にあります。
医療費は年々増加し、制度維持が厳しくなっている
高齢化と人手不足で病院中心の医療モデルが限界に近い
生活習慣病が増え続け、慢性疾患の管理が追いつかない
AI・ウェアラブル・個別医療への投資は欧米より遅れ気味
つまり日本は、
最も“病院の外での医療”が必要な国にもかかわらず、準備が追いついていない のが現実です。
私たちは、今のままの医療で未来を迎えて大丈夫なのか?
そして、この問いこそが未来の医療と生活のスタイルを考える出発点になると考えます。
未来医療を支える3つの技術
ダニエル・クラフトが語る「病院の外へ出る医療」は、夢物語ではありません。
その背景には、すでに私たちの生活に入り始めている“3つの技術革新”があります。
ここでは、その中心となる技術をシンプルに整理します。
1. バイオセンサー(身体の状態を“常時計測”する技術)
今後の医療の主役になるのが、身体の微細な変化をリアルタイムで測るセンサー技術 です。
例えば:
血糖値の変動を24時間読み取る
心拍や自律神経バランスを記録
体温のわずかな上昇・炎症の兆候を察知
排泄物のデータから腸内環境を推定
ホルモンのリズムを見える化
未来の医療は、病院で「診てもらう」ものではなく、普段の生活で“自動的に身体データが集まる”仕組みへ進んでいきます。
2. AI診断・AIコーチング(病気の兆候を“先に知る”時代へ)
大量のデータが集まると、次に必要なのは「それを読み解く力」。
それを担うのが AI です。
病気の初期兆候のパターンを発見
運動・睡眠・食事の改善ポイントを提示
個人に合わせたリスク予測
医師が見落としやすい微細な変化を分析
AIが「診断の一次レイヤー」を担うようになることで、医師は “最終判断”と“より専門的な判断” に集中できるようになります。
医療は“症状が出てから行く場所”ではなく、“症状が出る前に気づかせてくれる仕組み” に変わっていきます。
3. 遺伝子解析 × 個別化医療(Precision Medicine)
未来の医療の鍵は、「みんな同じ治療」→「一人ひとり違う治療」 へのシフト。
遺伝子による薬の効き方の違い(ファーマコゲノミクス)
代謝や栄養の個人差を解析
どんな病気にかかりやすいかを予測
遺伝的な弱点を補う生活戦略を設計
ダニエル・クラフトも常に強調しています。
“医療は個別化されるほど、効率的で安全になる”
栄養、運動、メンタルケアも「自分仕様」にカスタマイズされる時代が始まっています。
医療 × 日常生活 がつながる “新しい健康モデル”
これら3つの技術が組み合わさることで、未来の医療は次のように変わっていきます。
日常のデータ → AIが分析 → 早期の兆候を察知
生活習慣は自分専用に最適化される
病気を“治す”より“避ける”時代へ
医療は病院の中だけのサービスではなくなる
まさにクラフトが語るように、“医療は日常生活の延長線上へ” 移行していくのです。
日本はこの“医療の変化”に乗れるのか?
アメリカや欧州では、すでに「医療は病院の外へ出ていく」という流れが加速しています。
ウェアラブルやAIが体の変化を常時チェックし、“病気になる前に気づく医療” が現実化しつつあります。
では、日本はどうでしょうか。
日本では依然として、症状が出てから病院へ行く“治療中心”のモデルが主流です。
医療費は年々増え、人手不足も深刻化しており、今の形をこのまま維持するのは難しくなっています。
データを日常的に活用する医療も、世界に比べて制度も価値観も準備が追いついていません。
しかし実は、超高齢社会・生活習慣病の増加・医療費の増大という背景を考えると、本当に“医療のアップデート”が必要なのは日本のほうです。
つまり、世界が進む医療の変革は日本こそ最も乗るべき波であり、その第一歩は「個人の意識の変化」から始まります。
医療制度がすぐに変わるわけではないからこそ、自分の体を知り、日常から向き合っていくことがこれからの日本で最も大切な健康戦略になっていきます。
では私たちは、何から始めればいいのか?
ダニエル・クラフトが語る未来の医療は、「病院で治す医療」から「日常の中で、自分の状態を理解していく医療」へと大きく変わろうとしています。
しかし、この変化を待つ必要はありません。
私たちは今日から、小さな一歩を踏み出せます。
まずは “自分の体を知る” ところから
未来の医療がどれだけ進化しても、一番身近なデータは “自分の感覚” です。
朝の目覚め
食後の体調
エネルギーの上下
ストレスの感じやすさ
睡眠の深さ
こうした小さな変化に耳を澄ませることが、予測医療・個別医療の入り口になります。
小さな習慣の積み重ねが、最大の予防になる
AIや医療デバイスが発展しても、私たちが日々できる最も確実な健康投資は、結局のところ“シンプルな生活習慣”です。
呼吸を整える
食事のリズムを整える
程よく体を動かす
睡眠の質を上げる
気分転換をこまめにとる
一つひとつは些細でも、未来の医療が目指す方向と完全に一致しています。
自分専用の“健康戦略”を持つ時代へ
医療はますます個別化されていきます。
これからの健康づくりは「正解を探す」のではなく、“自分にとって最適な方法を見つける” ことが最も大切です。
そのためには、
体質
生活習慣
食事の傾向
ストレス
家族状況
年齢やライフステージ
こうした要素を総合的に見ていく必要があります。
未来の医療はまさにこの方向へ進んでおり、今のうちから“自分の取扱説明書をつくる”ような感覚で体と向き合っていくことが、最大の備えになります。
誰かと一緒に“自分の体を理解する”という選択
一人で健康を整えるのは難しい。
そんな方も多いと思います。
だからこそ、
血液データの読み取り
生活習慣のクセの発見
体質に合った食事・運動の方向性
家族の体調も含めた健康戦略の整理
こうしたプロセスを“誰かと一緒につくる”ことには大きな価値があります。
私が行っている健康カウンセリングでも、その人の生活習慣やデータを紐解きながら「その人だけの健康戦略」 を一緒に作っていくことを大切にしています。
未来の医療を“待つ”のではなく、自分の健康を“選ぶ”
医療が大きく変わろうとしている今、私たちができる一番の準備は 自分の体を知ること です。
毎日の食事、睡眠、運動、ストレスケアなど、小さな習慣を見直すだけでも体は確実に変わっていきます。
もし一人では進めにくいと感じる方は、健康カウンセリングを活用してみてください。
生活習慣や血液データを一緒に整理し、その人に合った“続けられる健康戦略”をつくるお手伝いをしています。
自分の未来の健康は、今日の小さな行動から。
気になる方はぜひご相談ください。
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