「寝る子は育つ」は大人にもあてはまる 〜メラトニンが導く、回復と再生の夜〜
「寝る子は育つ」――子どもの成長を見ていると、まさにその通りだと実感します。
長女が幼稚園に通い始めて、毎晩ぐっすり眠るようになりました。
その分、言葉や動きにぐんと変化が見られて、成長のスピードに驚かされる日々です。
一方で、まだ赤ちゃんの次女も、たっぷり眠れた日は表情や反応が穏やかで、体も心も落ち着いているように感じます。
子どもたちの寝顔を見ていると、
「こんなに深く、長く眠れるのがうらやましいな」と思うこともしばしば。
けれど実は、“眠ることの大切さ”は、子どもだけでなく大人にとっても必要不可欠なこと。
睡眠は、ただ疲れを取るための時間ではなく、心や体を整え、回復と再生を促すための大切な時間なのです。
そのカギを握っているのが、「メラトニン」というホルモン。
実はこのメラトニン、30億年前の生命誕生の頃から存在している最古の抗酸化物質のひとつ。
私たちの体を、紫外線やストレス、老化などから守る働きもあり、「眠り」だけでなく「若さ」とも関係が深いのです。
今回は、そんなメラトニンと「睡眠の質」にフォーカスしながら、
・寝ている間に体で起きている大切な働き
・メラトニンの役割と効果
・メラトニンを増やす生活習慣と栄養習慣
についてご紹介していきます。
忙しい毎日の中で、自分に合った「休息の整え方」を見つけたい方に読んでいただけたら嬉しいです。
寝ている間、体の中で起きていること
〜眠りの時間は「最高のメンテナンスタイム」〜
「寝ている間に、私たちの体の中ではどんなことが起きていると思いますか?」
実は、眠っているときほど、体はフル回転で働いています。
ただ横になって休んでいるようでいて、その時間こそが「心と体を整える時間」なのです。
では、どんな働きが進んでいるのでしょうか?
● 細胞の修復と再生
日中の活動で傷ついた細胞や筋肉、肌などが、睡眠中に修復されます。
特に、成長ホルモンの分泌は夜間にピークを迎え、傷ついた組織の回復や、代謝の調整を担っています。子どもがぐんぐん成長するのも、この夜のホルモン分泌が深く関わっています。
● 脳の老廃物を排出し、記憶を整理
睡眠中には、脳の中で「グリンパティックシステム」が活性化し、老廃物を排出します。
また、日中にインプットした情報を整理し、必要な記憶を定着させてくれるのもこの時間。
寝る前に勉強した内容が覚えやすいのは、こうした理由からです。
● 免疫力を高め、炎症をコントロール
睡眠中は、免疫細胞が活性化し、体内の異物やウイルスに対応しやすくなります。
また、炎症を鎮めたり、傷を治すための調整も行われています。
「よく寝たら風邪が治った」というのは、科学的にも理にかなっているのです。
● 抗酸化とストレスからの回復
日中に溜まった活性酸素(体のサビ)を除去する力も、睡眠中に高まります。
この抗酸化作用のおかげで、老化のスピードが緩やかになり、肌や内臓の健康も守られます。
また、自律神経のバランスも整い、心が落ち着きを取り戻す時間でもあります。
このように、眠っている時間こそが、私たちの体を回復させ、次の日に備えるための「再生の時間」。
そして、これらの働きをスムーズに進めるカギを握っているのが、「メラトニン」というホルモンです。
メラトニンの役割とその効果
「メラトニンが出ると眠くなる?」
実は、メラトニンには「眠らせる作用」そのものはありません。
正確には、“これから休む時間だよ”という体への合図を出すホルモンです。
この合図によって、体と心がリラックスモードに切り替わり、自然と眠りに向かっていきます。
そんなメラトニン、実は“眠りのスイッチ”だけでなく、体にとって嬉しい働きがたくさんあるんです。
● リラックスモードへ導くスイッチ
メラトニンが分泌されると、体は副交感神経優位の状態へと切り替わり、呼吸は深く、心拍はゆるやかに。
「もう頑張らなくていいよ」と言ってくれているように、体を休息モードへと導いてくれます。
● 細胞を守る抗酸化パワー
メラトニンは、30億年前から存在しているとも言われる自然界の強力な抗酸化物質。
体のサビ(酸化)から細胞を守り、特に脳や神経の修復に役立つとされています。
● 免疫力のサポートにも
実は、風邪やウイルスと戦う免疫細胞(NK細胞やT細胞など)の働きも、メラトニンが助けているという報告もあります。
睡眠の質が落ちると風邪をひきやすくなるのは、この働きと関係があるのかもしれません。
● がん予防の可能性も?
いくつかの研究では、乳がんや前立腺がんの発生を抑える効果が報告されています。
これは、メラトニンがホルモンバランスを整えたり、酸化を防ぐ作用があるからだと考えられています。
▶参考リンク(英語)
Melatonin as a Chronobiotic/Cytoprotective Agent in Cancer
Melatonin in Health and Disease
メラトニンはどうやって作られるの?
メラトニンは、脳の中心にある「松果体(しょうかたい)」という器官でつくられます。
材料になるのは、食事から摂る「トリプトファン」というアミノ酸。
体内では次のように変化していきます:
トリプトファン(食事から)
→ セロトニン(幸福ホルモン)
→ メラトニン(睡眠ホルモン)
この変換がうまく働くには、
朝〜日中の光を浴びること
適度な運動や活動量
バランスの取れた食事(特にたんぱく質・ビタミンB群・マグネシウム)
夜の静かで暗い環境(スマホのブルーライトは避けて)
といった「生活のリズム」が大切です。
メラトニンを増やす方法:生活編
夜ぐっすり眠るための準備は、実は朝から始まっています。
メラトニンが夜にしっかり分泌されるためには、朝・昼・夕の過ごし方――つまり1日の生活リズム全体が大きく関わっているのです。
朝:光を浴びて体内時計を整える
起床後に太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされます。これにより約14〜16時間後、メラトニンが自然に分泌される準備がスタート。
朝の散歩やベランダでの深呼吸など、できるだけ自然光を浴びる時間を意識してつくりましょう。
昼間:ほどよく体を動かす
日中に適度な運動をすることで、メラトニンの前駆体となるセロトニンの分泌が促されます。
ウォーキングや軽めのピラティス、呼吸を意識したリズム運動は、心地よい眠りのための土台づくりになります。
夕方〜夜:静かな環境と「ほぐし」で夜モードへ
日が落ちたあとは、体と心を徐々に“夜モード”に切り替える時間帯。
強い光や音を避け、照明は暖かみのある色に。スマホやパソコンの使用もできるだけ控えて、リラックスできる環境を整えましょう。
また、寝る前の「ほぐし」もおすすめです。
前回のブログでもご紹介しているように、筋膜リリースやストレッチで緊張をゆるめることで、自律神経のバランスが整い、眠りの質も向上します。
たとえば、
• 足裏やふくらはぎをやさしくほぐす
• 肩まわりや脛(すね)をゆるめる
• 骨盤まわりのストレッチで深い呼吸を導く
といったセルフケアを、心地よい呼吸とともに取り入れてみてください。
これらの小さな積み重ねが、メラトニンの分泌を後押しし、自然な眠りへと導いてくれます。
メラトニンを増やす方法:栄養編
メラトニンは、体内で
トリプトファン → セロトニン(幸せホルモン)→ メラトニン(睡眠ホルモン)
というステップで合成されます。
この一連の流れをスムーズに進めるためには、いくつかの栄養素が鍵を握っています。
● トリプトファン
メラトニンの“材料”となる必須アミノ酸です。
体内で合成できないため、毎日の食事からの摂取が不可欠です。
主な食材:卵、納豆、豆腐、バナナ、牛乳、ナッツ類、七面鳥の肉など
ポイント:糖質と一緒に摂ることで脳への移行が促進されやすくなります。
(例:バナナ+ナッツ、納豆ごはん など)
● ビタミンB6
トリプトファンをセロトニンに変換する酵素の働きを助ける補酵素。
不足するとセロトニン合成が停滞してしまうため、とても重要です。
主な食材:マグロ、鶏むね肉、鮭、にんにく、バナナ、玄米など
ポイント:ストレスやアルコールで消耗されやすいため、忙しい日ほど意識して補いたい栄養素です。
● 鉄分
鉄は、ビタミンB6の働きをサポートしながら、トリプトファンがセロトニンへと変わるステップにも深く関わっています。
そして、メラトニンへとつながる流れを安定させるためにも、欠かせない栄養素のひとつです。
多く含まれる食材:レバー、赤身の肉、あさり、ひじき、パセリ、ほうれん草、小松菜など
ワンポイント:ビタミンCと一緒に摂ると吸収がスムーズになります(たとえば、小松菜×レモンの炒め物など)
そして、意外と見落としがちなのが「消化力」の大切さ。
鉄の中でも、動物性食品に含まれるヘム鉄は、しっかりと消化されてこそ吸収されやすくなります。
そのためには、胃の調子を整えることや、タンパク質をきちんと分解できる消化環境がとても重要です。
● マグネシウム
神経の興奮を鎮め、心身をリラックス状態に導く栄養素です。
また、セロトニンとメラトニンの安定的な合成と分泌を支える重要なミネラルでもあります。
主な食材:アーモンド、カシューナッツ、ひじき、わかめ、玄米、豆類、アボカドなど
ポイント:睡眠の質を上げたい方には特におすすめ。エプソムソルト(硫酸マグネシウム)入浴でも補給可能です。
● ビタミンD
ビタミンDはセロトニンの分泌リズムを整える働きがあり、
それが夜のメラトニン生成に好影響を与えるとされています。
主な食材:鮭、いわし、卵黄、きくらげ、干ししいたけなど
ポイント:1日15〜30分の日光浴でも体内合成されます。
特に朝の光を浴びることで、メラトニンの生成が夜に向けてきちんとスイッチされます。
こうした栄養素を日々の食事の中で無理なく取り入れることが、「夜ぐっすり眠れる身体」を内側から支えてくれます。
まとめ
夏は暑さや湿気の影響で、どうしても寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めてしまったりと、眠りの質が下がりやすい季節です。
でも、ぐっすり眠れるようになると、体は日中しっかり動けるようになり、エネルギーも湧いてきます。
そしてその充実した活動が、夜の心地よい眠りにつながる――そんな好循環が、夏バテを防ぐカギとなります。
今回ご紹介したメラトニンを整える生活習慣や栄養サポートに加えて、
ピラティスも、眠りの質を高める心と体の調律法のひとつとしておすすめです。
深い呼吸と意識的な動きが、自律神経を整え、リラックスのスイッチを優しく押してくれます。
平塚・代官山両スタジオでは、7月のご予約を受付中です。
この夏、自分の整え方を見つけたい方は、ぜひチェックしてみてください。
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よく眠れて、元気に過ごせる毎日をつくっていくことが、夏を楽しむための第一歩。
一人ひとりのライフスタイルに合った整え方を取り入れて、この夏を健やかに、心地よく過ごしていきましょう。
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※本記事の内容は、一般的な健康情報の提供を目的としています。
体質や体調には個人差がありますので、不調の改善や健康管理に関して不安がある場合は、医師や専門家にご相談ください。